ボソンの生成・消滅演算子

まずはbosonicな生成・消滅演算子を考えます。これは調和振動子を解く際に導入されました。ここからは背後の調和振動子と言う背景を考えずに、交換関係

[ a,a^\dag ]=1 \; , \; [ a^\dag,a^\dag ]=0 \; , \; [ a,a ]=0
だけから様々な関係を導きます。

交換関係と固有値方程式

ここで粒子数演算子\hat{N}=a^\dag aを定義します。これはエルミートなので固有値をnとして\hat{N}|n\gt=n|n\gtと言う固有値方程式が成り立ちます。このケット*1にそれぞれaとa^\dagをかけたa|n\gt \; , \; a^\dag |n\gtを考えます。これらもまた粒子数演算子の固有状態になっています。

\hat{N}a|n\gt =(n-1)a|n\gt \; , \; \hat{N}a^\dag |n\gt = (n+1)a^\dag |n\gt
これからa|n\gt固有値はn-1で、a^\dag |n\gt固有値はn+1だと分かります。この結果から次の様な比例関係が見て取れます。
a|n\gt =c|n-1\gt \; , \; a^\dag |n\gt = c|n+1\gt
この比例定数は粒子数演算子の定義とそれぞれのケットが規格化されている事を要求すると定まります。
a|n\gt =\sqrt{n}|n-1\gt \; , \; a^\dag |n\gt = \sqrt{n+1}|n+1\gt

固有値nの受ける制限

固有値nは負でない整数しか取れない事を示せます。まず、a|n\gtのノルムを考えます。すると、ヒルベルト空間内のベクトルのノルムが負でないためにnは負の値を取れなくなります。
次にケット|n\gtに消滅演算子をk個かけると

(a)^k|n\gt =\sqrt{n}\sqrt{n-1}\cdots\sqrt{n-k+1}|n-k\gt
の様に次々と固有値を小さくする事が出来ます。ここでnが正の整数であると仮定すると、固有値0を取り、これに消滅演算子を作用させると自動的に消えてしまいます。整数以外では負になっても消えずに残ってしまい、不合理です。

こうしてすべてのベクトルは

|n\gt =\frac{1}{\sqrt{n!}}(a^\dag)^n|0\gt \qquad (n=0,1,2,\cdots)
と表せる事が結論できます。

*1:|n\gtの様な物をケットベクトルと呼び、量子力学的な状態を表している。