実効値についての考察

電気系分野に携わっていると電流または電圧の実効値を計算する必要が出てくる。例えば家庭用のコンセントには交流100Vの電気がやってきているが、その波高値は141Vである。つまり

<実効値> = <波高値> / \sqrt{2}

と表せる事を示している。この波高値と実効値の関係はいつでも使える物ではない。これは正弦波の時のみ正しい関係となる。任意の周期関数の場合には下記の様な積分で定義されると考える。
F_{\rm rms} = \sqrt{\frac{1}{T}\int_{0}^{T}\{f(t)\}^2 dt}

これを計算すれば任意の周期関数の実効値が得られる。例えば三角波の場合には次式の様になる。
<実効値> = <波高値> / \sqrt{3}

ここまでは周期的な場合を考えていて、Web上にも多くの情報がある。一方で激しい変動をする電流値、例えばインバータの消費電流の実効値を得ようとすると上記の定義が使えないのである。どう考えるべきだろうか。
なぜ実効値が欲しいのかと言うとそれは実効的な電流値・電圧値を元にして電力を算出する為であったり、瞬間的に流れる大きな電流によって素子が(熱的に)破壊されないかを議論する為である。
その方法として周波数成分ごとにフーリエ分解して計算する方法と、前出の積分式における周期Tを周期ではなく任意の計算時間Tとして解釈する方法がある。前者の場合はDC成分または非常に低い周波数を含む場合には無限に長い時間のデータが必要になる。有る短い時間を考えた時にその実効値は一定値を取ると考える事になる。後者は熱的な破壊を考える場合等に一定時間内に流れるエネルギーが一定値以内かを議論する為に使える。例えば10msの時間であれば100Aの電流が流れても壊れないが1s流し続ければ壊れてしまう。この様な判断をするのに後者の計算を用いる方法が考えられる。

世の中の資料には単純に"実効値"や"rms*1"と記述されている事が多いが、周期的かつ定常的な場合を除き、その計算方法は一意に特定されないので注意が必要である。私の職場における過去の評価レポートにおいても様々な計算方法が混在しており、明示されていなかったので新規のレポートについては特定できるようにした。

P.S.やっぱりmimeTeXの数式は美しくないな。。。

*1:二乗平均平方根:Root Mean Square