回転運動の力学

回転運動は直線運動よりも理解のハードルが高い。その理由は直線運動とは使う用語(概念)が異なる事と、数式が難しくなる事が多いことだろうか。しかしその類似性に着目すればそれほど難しい概念でない事も理解できるだろう。

用語

直線運動と回転運動での用語を整理してみよう。回転運動では"モーメント"と言う単語が複数の個所に現れるので混同しないように注意されたい。

項目 並進運動*1 回転運動 説明
位置 位置\vec{r} [m] 回転角\vec{\theta} [rad] 有る時刻での座標
速度 速度\vec{v}=\frac{d \vec{r}}{dt} [m/s] 角速度\vec{\omega}=\frac{d \vec{\theta}}{d t} [rad/s] 位置を時間の関数として表した時の時間微分。位置の時間変化の割合を表す。
加速度 加速度\vec{a}=\frac{d \vec{v}}{dt}=\frac{d^2 \vec{r}}{dt^2} [ m/s2] 角加速度
\vec{\alpha}=\frac{d \vec{\omega}}{d t}=\frac{d^2 \vec{\theta}}{dt^2} [ rad/s2]
速度の時間変化率を表す。
慣性 質量m [kg] 慣性モーメント
I=mr^2 [kg\cdotm2]*2
運動の変化のし難さを表す。この量が大きいと動き難く、止まり難い。
\vec{F} [N = kg\cdotm/s2] 力のモーメント(トルク)
\vec{T}=\vec{r}\times \vec{F} [N\cdotm]*3
物体に運動を起こさせる強さ。大きな力をかけるほど大きな加速度を生じさせる。
運動方程式 m\vec{a}=\vec{F} I\vec{\alpha}=\vec{T} 質量、加速度、力の関係式。すべての物体は古典的な力学の範囲ではこの方程式に従って運動する。

*1:直線運動とも。回転せずに平行移動するだけの運動をさす。

*2:ただしこれは質点に対する表式である。任意の形状を持った現実の物体の慣性モーメント(moment of inertia)を知るにはI=\int_V r^2 dmを計算する。よく知られた形状に対しては簡単な解が得られている。例:http://fnorio.com/0093equation_of_rotational_movement1/equation_of_rotational_movement1.html

*3:ここで"\times"はただの掛け算ではなくベクトルの外積を表している。またここでの\vec{r}は回転軸から力\vec{F}の作用する点を指すベクトルとする。