スピン角運動量

スピン角運動量演算子も軌道角運動量演算子と同じ交換関係を満たします。

[ S_i,S_j ]=\varepsilon_{ijk}iS_k
なので軌道角運動量の結論は全てそのまま当てはめる事が出来ます。

合成スピン演算子

ここで複数のスピンを合成する事を考えます*1。二つのスピンの基底ケットは1番目のスピンの固有ケット\{ |\pm \gt_1 \}で張られる空間と、2番目のスピンの固有ケット\{ |\pm \gt_2 \}で張られる空間の直積空間で表される。つまり

|\pm \gt_1 \otimes |\pm \gt_2
と表される。1番目の1は2番目のスピン空間内の恒等演算子です。全体のスピン演算子
{\bf S}={\bf S}_1 \otimes 1+1 \otimes {\bf S}_2
と書かれます。これらはそれぞれ
|\pm \gt_1|\pm \gt_2 \; , \; {\bf S}={\bf S}_1 + {\bf S}_2
の様に書かれるのが普通です。

ここで、粒子1の演算子と粒子2の演算子は交換します。それぞれの粒子内の空間内では今までの普通の交換関係を満たします。

合成スピンの固有値

様々なスピンの演算子に対して演算子とその固有値を列挙します。

{\bf S}^2=({\bf S}_1+{\bf S}_2)^2 \; ; \; s(s+1)
{\bf S}_z={\bf S}_{1z}+{\bf S}_{2z} \; ; \; m
{\bf S}_{iz}={\bf S}_{iz} \; ; \; m_i

3重項-1重項表示

上の表示法ではそれぞれのスピンの状態を指定する事で全体の状態を指定していました。この3重項-1重項表示では全スピンとz方向のスピンを指定する事で全体の状態を表します。具体的には、全スピンが1でz方向のスピンも1となるall upの状態は

|1,1 \gt= |+\gt_1|+\gt_2
と書けます。これにS^-をかけていくと
|1,0 \gt= \frac{1}{\sqrt{2}}(|+\gt_1|-\gt_2+|-\gt_1|+\gt_2)
|1,-1 \gt= |-\gt_1|-\gt_2
が得られます。更に|1,0 \gtと直交する状態として
|0,0 \gt= \frac{1}{\sqrt{2}}(|+\gt_1|-\gt_2-|-\gt_1|+\gt_2
が得られます。これらの初めの3つを3重項状態(triplet state)、最後の1つを1重項状態(singlet state)と呼びます。

*1:もっと一般的に角運動量の合成を議論すべきかも知れないが、ここではスピンについてだけ考える事にします。