軌跡と立体角

z=0平面に飛んでくる電子

今日の「謎は解けた!」は久保さんの熱学・統計力学の10章の例題3の疑問からお届けします。疑問点はこの問題の一部だが、一応問題文は載せておきます。

【問題】金属内の電子気体に対し、次の仮定に基づいて熱伝導率を概算せよ:
a) 全ての電子は一定の速さvで運動する。
b)一定の時間τごとに電子は等方的に散乱される。(例えば金属内の不純物によって)
c)散乱直後、各電子は散乱点での電子気体の内部エネルギーu(電子1個当たりの)をもつ。

この時、散乱された電子がz=0平面を通るとする。電子の軌跡が-z軸と(\theta, \theta + d\theta)内の角を持つ確率は、仮定b)により2\pi\sin\theta d\theta / (4\pi)である。

この確率が何でこうなるのかがしばらく理解できずに悩んでいた。これは次の様に理解できる事が分かった。

まず、球座標系を考え、電子が天頂角θ、方位角φで散乱されたとしよう。確率の分母にある4\piは全方位の立体角を意味している。次いで分子の方は微小面積要素dS=r^2\sin\theta d\varphi d\thetaを考える。方位角についてはどっちを向いていても良いので(0 , 2\pi)積分すると求める面積要素になる。つまり、天使の輪みたいな領域が求める(\theta, \theta + d\theta)内の角を持つ領域になる。後は立体角の計算をすれば良い。求める確率は

\frac{2\pi r^2\sin\theta d\theta/r^2}{4\pi}=\frac{2\pi \sin\theta d\theta}{4\pi}.
この本では仮定b)からこうなると書いてあるだけだが、自分のような凡人には理解するのに時間がかかる。